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日食について(2012年5月21日と2030年6月1日の金環日食編 その2) [日食・月食]

今回の記事は、残り1年を切った金環日食が属するサロス128について、その概要を書きたいと思います。

参考リンク
http://eclipse.gsfc.nasa.gov/SEsaros/SEsaros128.html
http://eclipse.gsfc.nasa.gov/SEsarosanimate/128.gif
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上に貼ったリンク先を御覧いただければ一目瞭然なのですが、この「128番」のサロスは、984年8月29日(以下、特に断りのない限りNASAのリンク先にある日付によります)に南極付近で生まれています。
http://eclipse.gsfc.nasa.gov/5MCSEmap/0901-1000/984-08-29.gif
2008年が「源氏物語と思われる冊子が制作されて1000年」とされていますので、それより古い時代に生まれたのです。
この直前の新月である7月31日には、「親」の代にあたる「90番」のサロスの日食が観測されています。
http://eclipse.gsfc.nasa.gov/5MCSEmap/0901-1000/984-07-31.gif
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一般的に、1ヶ月後に再び(2ヶ月連続で)観測される「親子関係(先に観測される方が必ず親になります)の日食」は、そんなに長く続かないのですが、この両者は、ここから1345年3月4日と4月5日までの間、観測され続けました。
http://eclipse.gsfc.nasa.gov/5MCSEmap/1301-1400/1345-03-04.gif
http://eclipse.gsfc.nasa.gov/5MCSEmap/1301-1400/1345-04-03.gif

なお、親にあたる日食は、生まれた場所とは反対側(このサロスを含めた「降交点日食」では北極付近)で観測され、子供にあたる日食は、生まれた場所(このサロスでは南極付近)で観測されます。
一方で、これとは正反対に、親にあたる日食が南極付近で、子供にあたる日食が北極付近で観測されるサロスもあります。
日本で次に皆既日食が観測される2035年9月2日のサロス(145)が代表例で、こちらは「昇交点日食」といいます。
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話を元に戻して、「独り立ち」したこのサロス128ではその後、1417年5月16日に初めて中心食(この時は皆既日食)が観測されました。
http://eclipse.gsfc.nasa.gov/5MCSEmap/1401-1500/1417-05-16.gif
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それを含めて4サロスは皆既日食でしたが、1489年6月28日に、日の出の時間帯だけ金環日食になる金環皆既日食に変わりました。
http://eclipse.gsfc.nasa.gov/5MCSEmap/1401-1500/1489-06-28.gif
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そこから1543年7月31日までそれが続きました。
また、この時に、部分日食の南限界線(=この線から南側では日食は観測されない)が誕生し、月の影全体が地球上に投影されることになりました。
なお、部分日食の南限界線は、このサロスの寿命が尽きるまで残ります。
http://eclipse.gsfc.nasa.gov/5MCSEmap/1501-1600/1543-07-31.gif
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これから先の中心食は、全て金環日食のみです。
日本で最初にこのサロスにおける日食が観測されたのは、1796年1月10日です。
夕方に静岡から西でほんの僅かに欠け、多くの場所(北大のリンクに表示されているのは都道府県庁所在地=以下、都市名は同じ)で日没帯食でした。場所によって、最大食分を迎える前だったり後だったりしています。
http://eclipse.gsfc.nasa.gov/5MCSEmap/1701-1800/1796-01-10.gif
http://www.hucc.hokudai.ac.jp/~x10553/jp3000/AN1796_%201_10.html
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それから2サロス後の1832年2月1日と3サロス後の1850年2月12日には、このサロスで観測される中心食では最長の8分35秒に及ぶ金環日食がほぼ頭の真上で観測されています(NASAの簡易版画像に於いて「Alt=何度」と書いてあるのが、最大食分の時に太陽が水平線(地平線)から何度の高さにあるかです)。
後者では、日本全国でも夕方に日没帯食の形で部分日食が観測されています。だいたい名古屋を境に、東では日没帯食(欠)、西では日没帯食(戻)になっています。
http://eclipse.gsfc.nasa.gov/5MCSEmap/1801-1900/1832-02-01.gif
http://eclipse.gsfc.nasa.gov/5MCSEmap/1801-1900/1850-02-12.gif
http://www.hucc.hokudai.ac.jp/~x10553/jp3000/AN1850_%202_12.html
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後者から3サロス後の1904年(明治37年)3月17日の夕方には、前回と同じく夕方に部分日食が観測されました。
http://www.hucc.hokudai.ac.jp/~x10553/jp3000/AN1904_%203_17.html
ここからは、NASAのリンク先に詳しい画像がありますので、それを貼ります。
この画像で、「Sub Solar」というのがありますが、それは、この日食における最大食分(画像では「Greatest Eclipse」)の時に、真上(90度)の高さに太陽がある地点です。ですから、両者が必ずしも一致するとは限りません。もっといえば、「Sub Solar」の場所では日食が観測されないこともあります。
改めて書くまでもないですが、これは、必ず北回帰線と南回帰線の間にあり、春分の日や秋分の日に日食が観測される時には赤道の真上にあります。
SE1904Mar17A.gif
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上を起点に、(日本では全く観測されなかった分も含めて)詳細の画像を貼っていきます。
まずは1922年3月28日です。
SE1922Mar28A.gif
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次が1940年4月7日です。
SE1940Apr07A.gif
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その次が、今回の3サロス前にあたる1958年(昭和33年)4月19日のお昼過ぎに観測された金環日食です。
SE1958Apr19A.gif
この日の金環日食は、台湾付近で7分を超える中心食が観測され、日本でも、種子島・屋久島・口之永良部島・トカラ列島・奄美大島・喜界島の北半分・徳之島の最北部・伊豆諸島の八丈島と青ヶ島で台湾と同じくらいの長さの金環日食が観測されました。
それ以外の場所では、特に関東から西では太平洋に近い程大きく欠けましたので、だいたい、1950年より前に生まれた方ならば、この日食を見た記憶があるかと思います。
http://www.hucc.hokudai.ac.jp/~x10553/jp3000/AN1958_%204_19.html
http://mainichi.jp/select/wadai/graph/kaikinishoku/8.html
http://mainichi.jp/select/wadai/newsbox/box/etc/2010/04/20100416org00m040006000c.html
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この次が1976年4月29日です。
参考までに書きますと、2030年6月1日の「北海道金環日食」の3サロス前になります。
SE1976Apr29A.gif
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この後、今回の直近に観測されたのが、1994年5月10日です。
ここから先は、月の影が地球上を通過する様子のGIFアニメーションがありますので、それも貼っておきます。
SE1994May10A.gif SE1994May10A animation.gif
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そして、このシリーズの本題である2012年5月21日(日本時間)です。
世界標準時では「5月20日」になっています。
別記事で詳しく触れたいと思いますが、極東地区で朝早く観測される日食ではこういうことがあります。
なお、この日食から部分日食の北限界線(=この線から北側では日食が観測されない)が消え、月の影全体が地球上に投影されることはなくなります。
http://www.hucc.hokudai.ac.jp/~x10553/jp3000/AN2012_%205_20.html
SE2012May20A.gif SE2012May20A animaition.gif
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前の記事でも書いた様に、日本では極めて希な 「同一サロスに於いて2サロス連続で中心食が欠け始めから欠け終わりまで観測される日食」 なのが、2030年6月1日です。
http://www.hucc.hokudai.ac.jp/~x10553/jp3000/AN2030_%206_%201.html
SE2030Jun01A.gif  SE2030Jun01A animation.gif
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この次は、2048年6月11日です。
SE2048Jun11A.gif  SE2048Jun11A animation.gif
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そして、2012年5月21日の3サロス後、2066年6月22日(日本時間では23日)です(これ以降、GIFアニメーションはありません)。
http://www.hucc.hokudai.ac.jp/~x10553/jp3000/AN2066_%206_22.html
今からちょうど55年後の明日の早朝には、北海道の函館本線・朝里駅付近と日高本線・浜厚真駅付近を結ぶ線から東側でのみ、日の出と共に日食が観測されます。
その殆どの地域で、地平線の下で金環日食が終わり、元の太陽に戻る状態で日の出を迎える日出帯食(戻)です。
SE2066Jun22A.gif
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この次は、2084年7月3日です。
http://www.hucc.hokudai.ac.jp/~x10553/jp3000/AN2084_%207_%203.html
詳細の画像があるのは、現時点ではここまでです。
この日は、北海道と青森県でのみ、午前10時前後にわずかに欠ける様子が観測されます。
SE2084Jul03A.gif
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このサロスで、最後に中心食が観測されるのは、2120年7月25日です。
http://eclipse.gsfc.nasa.gov/5MCSEmap/2101-2200/2120-07-25.gif
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以降は北極地方での部分日食が続き、2228年9月29日の1ヶ月後の10月29日に、「子供」の代にあたる「166番」のサロスが生まれます。
前者では、沖縄以外の本土で、夕方に部分日食が観測されます。
http://eclipse.gsfc.nasa.gov/5MCSEmap/2201-2300/2228-09-29.gif
http://www.hucc.hokudai.ac.jp/~x10553/jp3000/PA2228_%209_29.html
http://eclipse.gsfc.nasa.gov/5MCSEmap/2201-2300/2228-10-29.gif

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そして、2282年11月1日に、誕生から73回(1298年と2ヶ月あまり)続いたこのサロスの寿命が尽きます。
http://eclipse.gsfc.nasa.gov/5MCSEmap/2201-2300/2282-11-01.gif

こうして、1つのサロスの歴史について掘り下げてみますと、けっこう面白いです。
人間にとってはとてつもなく長いのでしょうけれど、宇宙全体の歴史から見たらそれさえ僅かな時間に過ぎず、1サロス周期なんて、ほんの一瞬なのです。
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さて、今日は夏至なのですが、下の動画を御覧になり「理科学的観点から見て明らかにおかしい箇所」を挙げて下さい。正解は、この日食に関する次の記事で書きます。
この動画は、私がファンでほぼ全てのCDを買った歌手・Winkの「白夜」という曲です。


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モッズパンツ

来年は日食がありますね。楽しみですね。何だか待ちきれないって感じですね。Wink懐かしいです。w (´∀`)ノ

(^ー^)ノシ
by モッズパンツ (2011-06-22 00:49) 

北海道大好き人間

>モッズパンツさん
nice! とコメント、どうも有難うございます。

2009年のトカラ列島以上に、来年は自宅で居ながらにして見ることができますから、ホントに待ちきれません。
Winkの間違い、お分かりいただけたでしょうか?

by 北海道大好き人間 (2011-06-22 20:14) 

北海道大好き人間

>ビタースイートさん
>旅爺さん さん
>でんさん さん
>Mark さん
nice! どうも有難うございます。

by 北海道大好き人間 (2011-06-22 20:18) 

kawasemi

nice&コメントありがとうございます。
ホウレンソウを食べて夏を乗り切ろう。
ホウレンソウの缶詰はアメリカでは普通に売られているそうです。
ただそのままで食べられるシロモノではないようです。
by kawasemi (2011-06-23 09:52) 

david

日食!落ち着いて観察をしたことがないけれど、機会があればしたいな。
by david (2011-06-23 12:50) 

optimist

来年の金環食は、ぜひ快晴となって欲しいと、心から祈っています。
by optimist (2011-06-23 23:23) 

北海道大好き人間

>幸せ家族さん
初めまして、nice! どうも有難うございます。

by 北海道大好き人間 (2011-06-25 16:14) 

北海道大好き人間

>kinda さん
初めまして、nice! どうも有難うございます。

by 北海道大好き人間 (2011-06-25 16:24) 

北海道大好き人間

>ロスさん
>リックさん
>幸福キツネさん
>イヴママさん
nice! どうも有難うございます。

by 北海道大好き人間 (2011-06-25 16:29) 

北海道大好き人間

>kawasemi さん
nice! とコメント、どうも有難うございます。

ホウレンソウは、今の時季は旬を過ぎていますので、なかなか手に入りませんし、入ったとしても、高くて美味しくありません。
ホウレンソウの缶詰は、現物を見たいです。

by 北海道大好き人間 (2011-06-25 16:30) 

北海道大好き人間

>david さん
nice! とコメント、どうも有難うございます。

今回の金環日食は、可能な限りじっくりと観測して欲しいです。

by 北海道大好き人間 (2011-06-25 16:34) 

北海道大好き人間

>optimist さん
nice! とコメント、どうも有難うございます。

私も同じです。これほど観測範囲に恵まれた日食はそう滅多にありませんから、最低限、午前中は晴れて欲しいですね。

by 北海道大好き人間 (2011-06-25 16:37) 

北海道大好き人間

>あんず-M さん
nice! どうも有難うございます。

by 北海道大好き人間 (2011-07-09 17:42) 

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