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大日影トンネル遊歩道 [道路・鉄道]

峠越えの道(JR中央本線編)で、笹子トンネルについて触れましたが、そこから甲府方面へ向かって甲斐大和駅(旧・初鹿野=はじかの=駅)を通過しますと、「撮り鉄」にとって有名だった「初鹿野の鉄橋」がありました。
さらにその先、勝沼ぶどう郷駅へ行く直前に、かつては「深沢トンネル」と「大日影トンネル」をくぐりました。そのうち、大日影トンネルが今、遊歩道として整備され、開放されています。今回は、それについて書きます。

深沢トンネルと大日影トンネルは、初鹿野の鉄橋と共に、線形改良によって1997年に廃線になりました。鉄橋は鉄橋もとい撤去されましたが、トンネルは2005年に、当時の勝沼町(今の甲州市勝沼地区)に譲渡されました。

遊歩道へは、深沢口(東京方面)からでも菱山口(甲府方面)からでもアクセスできますが、私は菱山口(勝沼ぶどう郷駅)から行ってみました。

駅前にバイクを止め、案内看板に従って進みますと、静態保存されている国鉄EF64形電気機関車等が出迎えてくれます。

この機関車以外には、大雨対策の工事(笹子トンネルをコンクリートで固めたのもその一環)をした記念碑等があります。

ここから沢を渡ってトンネルへ向かうのですが、その沢を渡る「河川隧道」も、このトンネルに併せて造られました。これと同じものは反対側(東京方面)にもあるのですが、木が生い茂っていて暗いのでデジカメでは上手く写せません。

いよいよトンネルです。新旧の大日影トンネルが並んでいます。

当時のままの銘板です。

そして中へ入ったのですが、湿気が凄いです。ましてや、このトンネルは東京方面から甲府方面へ向けて緩い下り坂になっているので(後で画像を貼ります)、菱山側から深沢側は「霧」状態で見えません。
レンガ(地元の土を使ってこの近くで焼いたそうです)と石(御影石=地盤が弱い場所で補強用に使用)だけで造られた壁や天井は、かつてここを走っていた蒸気機関車の煤がこびりついたままになっています。
レールも、両方の坑口の一部を除いて当時のままです。

以下、トンネル内にある保線施設です。
測量の際に使用する「ベンチマーク」です。

中間点を示す案内板です。高速道路のトンネルにあるそれみたいに、蛍光灯で光る「誘導灯」ではありません。

勾配を示す「傾斜標」です。画面右側が甲府方面です。

東京駅からの距離を示す「哩(マイル)標」です。実際には「キロメートル標」です。右下にあるのは、先程触れた「ベンチマーク」です。

この他、保線要員が電車を避けるための待避所にもこのトンネルの歴史を示したパネルがあるのですが(全ての待避所にあるわけではありませんが、照明はついています)、湿気で水滴がついているのでフラッシュを反射してしまい撮影は難しいです。興味がある方は、是非ともお越し頂いてその目で御覧下さい。

約40分(写真を撮りながらなので)かけて深沢口に抜けました。笹子トンネルとほぼ同じ時期に造られたので、ポータルにも独特の雰囲気があります。新しくコンクリートで造るトンネルも、出入り口くらいはこういった「装飾」を施せばいいのにと思います。

遊歩道の案内標識です。


この真反対には、旧深沢トンネルを転用した「勝沼トンネルワインカーヴ」があります。その入口と説明看板(2010年7月6日に説明看板の写真を追加)です。


扉の周りのレンガや石の色が他と変わっているのは、このトンネルが廃止された後、一旦コンクリートで塞いでしまい、再びそれを削ったからなのです。

ちょうど係の人がいたので、入口から中の様子を撮影させてもらいました。このずっと奥にたくさんのワインが寝かされて(熟成されて)います。

ここと大日影トンネルは、この近くにかかる祝橋等と共に、ワイン醸造を支えたインフラ施設・建築物として、2007年3月、経済産業省の近代化産業遺産に認定されています。
甲州市では、これらの産業遺産を徒歩でめぐるルートとして「勝沼フットパス」を整備しています。
(出典:ウィキペディア「大日影トンネル遊歩道」から一部改変)





そして、元来た道を戻って(トンネルの両端を結ぶシャトルバスとかはありませんから、反対側へ来た以上は、自分の足で戻る必要性があります)、再び勝沼ぶどう郷駅へ戻りました。

ちょうどその時、甲府行きの普通電車が新大日影第2トンネルから出てきましたので、一発勝負でシャッターを切りました。保線工事中(電車の手前に写っている「蛍光イエロー」が保線作業員)だったので、警笛を鳴らしてトンネルを通過します。
旧大日影トンネルの中でも、壁一枚(と言っても分厚いレンガとコンクリートですが)隔てた向こう側が現トンネルなので、列車が通過する音が聞こえます。

さて、これより古い笹子トンネルも、中央本線の高速化による線形改良やリニア中央新幹線の開通等で廃線になる可能性も捨てきれません。
その場合、封鎖することになると思いますが、旧深沢トンネル(勝沼トンネルワインカーヴ)みたいにコンクリートで塞ぐのではなく、手前にフェンスを設置して、極力原型を損なわないで欲しいと思います。多分、その頃には重要文化財か何かに指定されると思っていますが。

勿論、ここみたいに遊歩道として整備すればなお結構ですが、全長4,656.2mのトンネルを歩いて通過するのに早足でも1時間以上かかるので、富山の黒部ダムみたいに「トロッコ」が現実的かなあと思います。

なお、大日影トンネル遊歩道には非常口もトイレもないので、「閉所恐怖症」の人は、入口から100mくらいにとどめておいた方が賢明です。中を歩いても、1,367.8mの全長以上に長く遠く感じます。

「峠越え」も含めて、一連の「トンネル」に関する記事は、これで一応終わりになります。


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モッズパンツ

1km以上もあるトンネル遊歩道は、何だか恐いような気もしますが、なかなか体験できませんので、ちょっと面白そうですねー。そういえば、往復しなくちゃいけないんですね。w (ノ∀`)アチャー
ワイナリー来ましたね。ここで美味しいワインが、イパーイおねんねしているんですね。w (^ω^)b
by モッズパンツ (2009-07-17 22:32) 

optimist

旧大日影トンネル、雰囲気ありますね~。
これを見た後で、コンクリート打ちっぱなしを見ると、確かに味気ない・・・。
by optimist (2009-07-17 23:33) 

北海道大好き人間

>モッズパンツさん
nice!とコメント、どうも有難うございます。

実際に歩いてみれば分かりますが、「(約)1,400mってこんなに長かったけか?」と思うくらい長いです。ましてや、時期にもよりますが、直線なのに向こう側が見えないですから。
案内看板には「片道30分」としか書いていませんし、関門人道トンネルと違って人が通ることを前提に造られたわけではないので歩く距離以上に疲れます。
行ったのが平日の午後だったので、すれ違った人は一人だけでした。
まあ「鉄」にとっては、普段見ることのできないトンネル内の保線設備がそのまま残されていますから、それなりに楽しいでしょうけれど。

ワイナリーについては、笹子峠の取材をした時から書こうと決めていました。全国探してもここくらいしかないですから。
暗くて湿気が多いので、キノコ類の栽培にも適しているかも知れませんが、別に空調機器を入れているわけでもないのに、キノコの仲間であるカビは生えていないのです。
by 北海道大好き人間 (2009-07-17 23:37) 

北海道大好き人間

>optmistさん
nice!とコメント、どうも有難うございます。

これと笹子トンネルの記事を書くきっかけとなったのは、1999年11月7日付の読売新聞日曜版の「近代化遺産 ろまん紀行」で笹子トンネルの記事が出たからです(今も手元にあります)。
ましてや、笹子も大日影も新旧のトンネルが並んでいますから、その差が余りにもハッキリしすぎます。
by 北海道大好き人間 (2009-07-17 23:47) 

北海道大好き人間

>moonrabbitさん
nice!どうも有難うございます。
by 北海道大好き人間 (2009-07-18 22:37) 

丹下段平

北海道にも廃トンネルは数えきれないほどありますが、有効利用しているといった話は聞いたことがありません。
by 丹下段平 (2009-07-19 00:54) 

北海道大好き人間

>丹下段平さん
nice!とコメント、どうも有難うございます。

私がかつて住んでいた場所には、北海道遺産に登録され、タウシュベツ橋梁で全国的に有名な旧士幌線がありますが、あそこのトンネルも塞がれたまま(コンクリートではなくフェンスだったと思いますが)ですね。そういえば遺産に登録されたのはアーチ橋群だけで、トンネルは除外されているかも…。
まあ、万が一ヒグマが棲み着いてしまったりしたら危険だという事情もあるのかも知れません。
by 北海道大好き人間 (2009-07-19 02:04) 

北海道大好き人間

>旅爺さん
nice!どうも有難うございます。

by 北海道大好き人間 (2009-07-19 21:33) 

北海道大好き人間

>アヨアン・イゴカーさん
nice!どうも有難うございます。
by 北海道大好き人間 (2009-08-01 20:17) 

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