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日食について (2009年 トカラ列島皆既日食編 その1 ) [日食・月食]

今から1ヶ月後の7月22日(水曜日)の午前11時頃に、日本国内では「46年ぶり」となる皆既日食が観測されます。
既に他の方々も私と同じ様なブログをあちこちで書いていると思いますが、このブログを公開した時点でハッキリしていないこと(気がかりなこと)が一つだけあります。

それはズバリ「当日のお天気」です。
日食や月食等のいわゆる「天体ショー」は、学校の運動会や遠足と違って、雨や雪だからといって順延はしてくれません。下界が雲に覆われていても、その雲の上では天体ショーが起きています。
最近の例では、2007年8月28日の皆既月食や今年の2月9日の半影月食はほとんどダメでした。
ですが、今回は、中心線が通過する地域(日本では鹿児島県・トカラ列島の「悪石島=あくせきじま」付近)では継続時間(皆既状態が続く時間)が6分(参考:理論上、最長の皆既日食は7分31秒)を超え、今世紀中に全世界で観測される皆既日食の中では最長なのです。私は観測ツアーには行きませんが、是非とも晴れて欲しいものですね。

この皆既日食が観測される範囲は、前のブログにも貼りましたが、以下の図を御覧下さい。
SE2009Jul22T.gif

この皆既日食で、月の影がどの様にして地表を通過するかは、以下のGIFアニメーションを御覧下さい。
真ん中の青い点で皆既日食が観測され、それ以外の薄暗い影では部分日食になります。
SE2009Jul22T animation.gif
GIFアニメーションが上手く表示されない場合は、下のリンク先で御覧下さい。
http://eclipse.gsfc.nasa.gov/SEanimate/SEanimate2001/SE2009Jul22T.GIF

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ここで、「トカラ列島皆既日食」から離れます。
私が、今回の皆既日食のことを知ったのは、今からおよそ30年前、小学校高学年の頃です。
図書館にあった本で「1999年夏に奄美大島で皆既日食が観測される」と書いてあった様に思います。
当時は、インターネットは勿論なく、今にしてみればオモチャみたいなPCでさえ非常に高価な時代でしたから、今日の様に一般人が正確な情報を入手するのはムリでした。
結果として「1999年夏」から10年経って今回の皆既日食になるわけです(奄美大島は北部でのみ観測できます)。

なお、上で書いた「1999年夏の皆既日食」というのも実際にありました。
8月11日に、北米大陸の東の海上から北大西洋を経てヨーロッパを横断し、インドにかけて観測されています。因みに20世紀最後の皆既日食(西暦2000年は4回日食が観測されていますが、全て南極或いは北極地方の部分日食のみ)です。
SE1999Aug11T.gif
私もTVのニュースで見た気がします。

この皆既日食の1サロス前が、1981年7月31日のお昼頃に、樺太で観測された皆既日食(札幌で80%、稚内で87%の部分日食)です。
SE1981Jul31T.gif
当時中学2年生だった私はこの時、家族と北海道を旅行していましたが、大きく欠けた太陽を見ることができました。

さらにこれの1サロス前が、1963年7月21日の早朝に、北海道中央部からオホーツク海にかけて日の出と同時に観測された皆既日食です。
SE1963Jul20T.gif
冒頭で触れた「日本国内では46年ぶり」とは、この皆既日食のことです。

さらにさらに、これから4サロス後の2035年9月2日午前10時頃には、能登半島から富山湾を経て新潟県上越地方~長野県北部~関東平野北部~鹿島灘にかけて皆既日食が観測されます。
SE2035Sep02T.gif
新聞等で「次に国内で観測される皆既日食は2035年(9月2日)」と書かれている皆既日食とはこのことです。

おまけに、これから3サロス後の2089年10月4日午前8時40分頃には、沖縄県宮古島付近で皆既日食が観測されます。
SE2089Oct04T.gif
このサロスの日食は、これから3サロス後(2143年11月7日)には、東海地方から南側でのみ観測される食分の少ない部分日食になり、それ以降は日本国内では殆ど観測できなくなります(地域を限定して僅かに欠ける程度の部分日食であれば何度か観測されます)。
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補足しますと、国内の陸地ならば「46年ぶり」ですが、陸地に限らず「海上(領海内)」ならば、1988年3月18日に小笠原諸島の近海で観測されています。
SE1988Mar18T.gif
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話を「トカラ列島」に戻します。
今回の皆既日食は、1919年5月29日にアーサー・エディントンがアルベルト・アインシュタインの「相対性理論」の証明実験を行った皆既日食の5サロス後になります。
この皆既日食では、南米大陸中央部から大西洋を横断し、アフリカ大陸中央部にかけて観測されました。証明実験が行われたのは、アフリカのプリンシペ島です。
SE1919May29T.gif

今回の皆既日食も、3サロス前の1955年6月20日には、フィリピンの西の海上で7分を超える皆既日食が観測されています。
SE1955Jun20T.gif
ですがこの時代には、今みたいに自由に海外へ行く(観測する)ことは難しかったと思います。

今回の皆既日食では、国内で中心帯が通過する地域がいわゆる「絶海の孤島」なので、そこへ行くツアーは、天文ファンにとってまさに「高嶺の花」になっています。
一例を挙げますと、前出の悪石島へ行くツアーは、日食の前後3日間(計1週間)民宿に滞在するツアーでも、普通ならばヨーロッパへ行けそうな値段です(1人あたり30万円台後半)。これ以外に同じ悪石島で「テント」や「学校の体育館」で1週間過ごすツアーでも同じくらいの値段です。
この他、客船で2泊3日のクルーズツアー(日食当日は別の島へ上陸)も、3名1室で40万円台からです。

ところが、去年からの景気の悪化等も影響してか、このブログを書いている時点でも、中心線に最も近い悪石島はともかく、周辺の島へ行くツアーはまだ売り切れていません。

国内ツアーなのに何故これほどに高いのか?と思う人のために説明(注:以下、私の推測です)しますと、それは、コンビニもなく、本土(奄美大島・鹿児島)との定期便(フェリーのみ、当然飛行場はありません)は2日に1便という場所(十島村全体の人口でも700人未満)なのに加えて、参加者(客船ツアーも含めて十島村全体で1,500人くらいだとか)の食糧や水、シャワー(お風呂ではありません)やトイレ等を確保するのに多額の費用(調達費に加えて現地までの運搬費も含まれるでしょう)がかかるからなのだそうです。
なお、トカラ行きの船が発着する鹿児島や奄美大島・沖縄までの移動費用はツアー代金に含まれていない模様です。鹿児島はともかく、奄美大島からトカラへ渡る人が乗る奄美大島までの飛行機はどうなっているのでしょうか?因みに、2ヶ月前に発売されるのですが、この前後の奄美大島発着便(行きは7月18日~21日、帰りは22日~24日)は、午前9時30分の発売開始時点で完売・キャンセル待ちだったそうです。おそらく、観測ツアーに押さえられたのでしょう。

これと同じ様なことは、2042年4月20日の午前11時30分頃に鳥島の近海で観測される皆既日食(因みに、1988年3月18日の「小笠原皆既日食」の3サロス後に当たります)や2070年4月11日のお昼前にベヨネーズ列岩で観測される皆既日食でも起こると思います。

2042年4月20日に鳥島の近海で観測される皆既日食の全体図
SE2042Apr20T.gif

2070年4月11日にベヨネーズ列岩で観測される皆既日食の全体図
SE2070Apr11T.gif
両者共、一般人は島に上陸できないので、完全に「船上観測」か、日本国内で中心食が観測されるにも関わらず、わざわざフィリピンやマレーシア・タイ等の東南アジアまで行って皆既日食を見ることになると思います。

これだけの「日食狂想曲」になっても、当日に雨が降ったり、場合によっては台風が九州南部~沖縄付近に接近すれば、全てが「パー」です(鳥島やベヨネーズ列岩の時には台風の心配はなくても、雨の心配はあります)。
旅行会社のサイトにも「悪天候で日食が観測されなくても、代金の返金は行いません」的なことが書かれていますが、最も怖いのが、次に国内で皆既日食が観測される「2035年9月2日」ではないかと思います。なにしろ、台風の厄日とされる「二百十日」の翌日なのに加え、当日が日曜日なので全国各地から観測ツアーが組まれ、「皆既日食なんて滅多に見られないから取り敢えず行ってみよう」的ないわゆる「素人」が殺到すると予想されるからです。

前に書いたブログと重複しますが、今回の「トカラ列島」から3サロス後の2063年8月24日の午前9時頃には、津軽海峡を挟んで北海道渡島・桧山地方と青森県で、このトカラと同じ規模(継続時間は5分弱)の皆既日食が観測されます。
SE2063Aug24T.gif
ですが、今生きている人がどれだけこの皆既日食を観測できるのでしょうか?平均寿命が80歳と仮定して、「津軽海峡」も見られるのは1983年以降に生まれた人でしょうか?因みに私の学年は、生きていれば95~96歳になっています。
ここまでに挙げた図には、今世紀中に日本国内で中心食が観測される皆既日食が全て含まれています。その時の年齢にもよりますが、2035年9月2日と2063年8月24日の皆既日食は何としてでも見ておきたいものです。


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JJ

皆既日食は、今年の話題ですよね~。
でも、1ヵ月後だなんて、日にちまでは把握して
いませんでした。
望遠鏡メーカーの株価が上がっただとか聞きますが
景気回復の立て役者にでもなってくれないですかね!?
by JJ (2009-06-22 22:28) 

北海道大好き人間

>JJさん
nice!とコメント有難うございます。

2ちゃんの天文・気象板のスレッドでは「マニア」が集うので盛り上がっていますが(私も参加しています)、一般市民の反応はイマイチですね。むしろ、3年後の2012年5月21日の金環日食の方が盛り上がると思います。
県庁所在地&政令指定都市だけでも結構な数になりますから(前の記事の冒頭に貼ったリンクで調べれば分かります)。
私なんか、時間とお金があったらトカラ列島(それがムリでも奄美大島)まで行きたいくらいです。

望遠鏡メーカーの株価が上がった話は聞いています。でも、上との関連で、2012年の方が経済貢献すると思います。
なお、日食を観測する時には、そこで発売する「日食グラス」をかけて下さい。色つきの下敷きなどでは紫外線で目を傷め、最悪の場合、失明します。
by 北海道大好き人間 (2009-06-22 23:02) 

モッズパンツ

とうとう来ましたねー。w

NHKのニュースウオッチ9でレポートしておりましたね。w (^ω^)b
この海域に船上観測目的で船舶が集中することが予想されるため、海上保安庁でもイロイロと対応に苦慮しているようです。w
悪石島で近ツリの担当者が水確保とかイロイロと奮闘しておりました。しかし、降水量が例年よりも極端に少ないため、ちょっと困っているようでした。w (´∀`)ノ

(^ー^)ノシ
by モッズパンツ (2009-06-23 00:17) 

モッズパンツ

次のページもマニアック過ぎでついて行けない。w
by モッズパンツ (2009-06-23 00:25) 

北海道大好き人間

>モッズパンツさん
nice!とコメント有難うございます。

海上保安庁は「日食観測が目的の船舶の航行は認めない」としていますので、いわゆる遊覧船やトレジャーボートの航行は制限されます。
ところが「漁船」はその適用を受けないので、それに乗り込んであくまでも「海釣り」が目的で中心食線が通過する地域の海上に行き、そこで錨を降ろして船上から皆既日食を観測しようという「もぐり」もあるみたいです。

水に限らず、いわゆる「ライフライン」の確保は、トカラ列島の島々にとって大きな課題です。
ただ、その分、日食当日を挟んで6泊9日の炎天下におけるテント生活(悪石島の場合)が1人最低でも300,000円と、コストを考えると致し方ないのですが、2ちゃんのスレッドでは「ぼったくり」と叩かれています。
今日以降に書き込まれる記事は、非常にマニアックです。何しろ、今生きている我々は絶対に見ることができない「遠い未来」のことですから。
by 北海道大好き人間 (2009-06-23 12:18) 

optimist

先日は、ブログへのご訪問ありがとうございました。
日食について、分かり易く説明されていて、素晴らしいですね。
私のブログでもご紹介させて頂きたいです。分かり易く説明する自身が無いので、私の記事は、専ら日食をどう楽しむか?で書いているので、詳しい話は、コチラのブログに振らせて頂こうかと・・・^^;
これからの記事も楽しみです。
by optimist (2009-06-23 22:07) 

北海道大好き人間

>optimistさん
nice!とコメント有難うございます。

この記事を書くに当たっては、冒頭にリンクを貼っていますが、北大のサイトを参考にしました。
ですが、【昇交点日食(NS型)】と【降交点日食(SN型)】について、天空上を太陽が動く「黄道」と月が動く「白道」が云々と書き出すと、ものすごくややこしくなってしまいますので、分かりやすく要点だけ押さえました。

なお、明日以降の11連続投稿は、北大のサイトからエクセルをDLしないと全く意味がありません。
それが終わってから、日食の観測方法(楽しみ方)を書く予定です。

トラックバックしたい場合には、その旨申し出て下されば許可します。
by 北海道大好き人間 (2009-06-23 23:02) 

moonrabbit

当日は忘れている予感が・・・(^^;
by moonrabbit (2009-06-25 09:17) 

北海道大好き人間

>moonrabbitさん
nice!とコメント有難うございます。

私の場合、さすがに忘れることはないでしょうけれど、夏休みの真っ最中なので、仕事が入りそうな気はしています。
by 北海道大好き人間 (2009-06-25 13:13) 

はいてんしょん

未来のお話はマニアックですね(^^

by はいてんしょん (2009-06-27 19:42) 

北海道大好き人間

>はいてんしょんさん
nice!とコメント有難うございます。

現在連続投稿している未来の日食は、おそらく誰もやっていないであろうことをやってみました。サロス180番までの日食は、NASAのHPにも日付が載っています(但し、日食全体図へのリンクは貼ってありません)。

ところでこのアイコン画像、今は次女が引き継いでいますが、そこからクレームをつけられる可能性がありますし、ここの規則にも抵触しているかも知れません。
私も、北海道のキャラクターを使用しようかと思いましたが、「著作権や肖像権が設定されている画像の使用」にあたるみたいなので、北海道庁の画像(前は真冬の道庁でした)にしています。
by 北海道大好き人間 (2009-06-27 20:44) 

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