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日食について はじめに [日食・月食]

このブログから、7月22日(水曜日)に観測される「トカラ列島皆既日食」等、「日食」について書きたいと思います。

今回は、トカラに限らず全ての日食に共通することを書きたいと思います。
その前に、以下のリンクを開いておくと便利です。
北海道大学のコンピュータが作成した
日食・月食情報データベース
http://www.hucc.hokudai.ac.jp/~x10553/
内の
日食とサロス周期 http://www.hucc.hokudai.ac.jp/~x10553/guide/guide.html
NASAの日食に関するHP
(英語版=接続状況によっては「国際通話料金」がかかるので注意)http://eclipse.gsfc.nasa.gov/solar.html
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まず、「サロス」について説明します。
「サロス」とは=ある日食(月食)から18年と10日ないし11日(その間に閏年=2月29日が何回入るかによって決まります)=6585日と8時間後に、今回観測される地点から西へ経度で約120度移動した場所で再び同じ様な日食(月食)が観測されること(周期の単位)、及びその系統(番号)です。
NASAのHPでは、トカラ列島皆既日食には「136」が割り振られています。
これを3回、即ち「54年と1ヶ月と2,3日」前か後には、今回と同じ経度地域で似た様な日食(月食)が観測されます(されています)。
これを「3サロス(周期)前(後)の日食(月食)」と言います。

次に、日食が属するサロスの種類について、上のリンクを分かりやすく解説します。
中心食については、太陽>>>月>>>地球の三者の距離(位置関係)によって、「皆既日食」か「金環日食」、はたまた「金環皆既日食」という特殊な日食になるかが決まります。

参考:「金環皆既日食」とは
ある日に観測される中心食帯の中で、真ん中(お昼前後に観測される地域)では皆既日食が、それ以外の場所では金環日食が観測されるというものです。皆既日食になるところが中心食帯の中央の僅かな範囲だけの場合もあれば、反対に皆既日食になる範囲が長く、両端の僅かな部分だけが金環日食になる場合もあります。
どちらも、観測できる範囲の直径は数km以下、時には100m単位という狭さになり、継続時間は殆どが秒単位の短さ(0秒ということもあります)です。金環日食が観測される地域では、太陽のリングは極めて細く、時にはリング全体が月の凹凸によって途切れ途切れになる「ベイリービーズ」なることもあります。
1つのサロス系統の中で、ずっと皆既(金環)日食という場合もあれば、途中で切り替わっていくものもあります。上で触れた金環皆既日食は、その時に観測されることが多いです。
継続時間も、記録的な長さのものもあれば短いものあったりと多種多様です。


サロス系統の種類については、2つあります。いろいろ書くとややこしくなるので、要点だけまとめました。

一つは、北極付近の小さな部分日食から始まり、それが成長(南下)するに従って、まず北極付近で中心食を持ち、それによって地球上に投影される月の影が徐々に南へ向かいます。やがて、南極付近の小さな部分日食でその寿命が尽きます。

もう一つは、これとは反対に、南極付近の小さな部分日食から始まり、それが成長(北上)するに従って、まず南極付近で中心食を持ち、それによって地球上に投影される月の影が徐々に北へ向かいます。やがて、北極付近の小さな部分日食でその寿命が尽きます。

前者を「昇交点日食(以降、北海道大学のサイトに従って『NS型』)」と言います。

後者を「降交点日食(以降、北海道大学のサイトに従って『SN型』)」と言います。
トカラ列島皆既日食は、後者(SN型)になります。
逆に、トカラ列島の次に日本国内で観測される皆既日食(2035年9月2日に能登半島~鹿島灘にかけての範囲)は前者(NS型)です。

一つのサロスの寿命についてですが、生まれてから寿命が尽きるまでに70回~80回前後、地球上に影を落として日食が観測されます。
なお、生まれた後と寿命が尽きる前の5,6回~20回(回数に幅がありますが、サロスによってまちまちです)くらいは、地球上では部分日食しか観測されません。
1サロス周期は、前にも書いた様に「18年と10日ないし11日と8時間」ですから、その寿命は1200年~1500年という長さです。
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以上のことを頭に入れた上で、今年の「トカラ列島」皆既日食と、それから3サロス後にあたる2063年8月24日の「津軽海峡」皆既日食の全体図を比べて下さい。

上が「トカラ列島」、下が「津軽海峡」です。
SE2009Jul22T.gif

SE2063Aug24T.gif

上で貼った図において、中央にある青い線に挟まれた帯状の地域でのみ皆既日食が観測されます。その中にある○は、10分刻みで月の本影(=皆既日食が観測される場所)がある場所を示します。それ以外の地域では部分日食になります。
横の水色の線は、最大食分が20%刻みで表示されています。地図でいうところの等高線(等深線)です。真ん中(中心食帯)に近ければ近い程大きく欠けます。
縦の緑の線は、(世界標準時=日本時間はこれに9時間足して下さい)30分刻みで月の影の中心が何処にあるのかを示しています。
次に、全体図の下にある「Path Width」と「Duraition」の値に注目して下さい。
前者は「(最大食分を迎える時に)皆既日食が観測される範囲=中心食帯の幅=月の本影の直径」で、後者が「中心食の継続時間」です。
前者は図を見れば一目瞭然ですが、マニアが重視するのは当然、後者です。
前者は、北極や南極付近の高緯度の地域で中心食が観測される時には、地表に対して斜めに月の影が投影されるので、時には1000kmを超えることもあります。ですから、アテにはなりにくい面もあります。
逆に、赤道付近等の低緯度の地域では、値が大きければ大きい程、継続時間は長くなる傾向にあります。

また、左右にピンクの線で囲まれた場所がありますが、これは、左(西)側では、日の出の時には日食が始まっている状態、右(東)側では、日の入りの時はまだ日食が終わっていない状態を示します。

このピンクの線で囲まれた場所について、さらに詳しく書きます。
まず、西側の3本の線について
西側の線=日の出と同時に日食が終わります。
真ん中の線=日の出と同時に日食の最大食分を迎えます(皆既日食や金環日食の中心帯が通過していれば、日の出の時に皆既若しくは金環状態の太陽が昇ってきます)。
東側の線=日の出と同時に日食が始まります。
西側の線と真ん中の線に囲まれた地域では、日の出の時には最大食分を過ぎていて、元の太陽に戻る状態で昇ってきます。その後、地平線の上で元の太陽に戻ります。
真ん中の線と東側の線に囲まれた地域では、日の出の時には最大食分を迎える前で、その後、地平線の上で最大食分を迎え、元の太陽に戻ります。

次いで東側の3本の線について
西側の線=日の入りと同時に日食が終わります。
真ん中の線=日の入りと同時に日食の最大食分を迎えます(皆既日食や金環日食の中心帯が通過していれば、日の入りの時に皆既若しくは金環状態の太陽が沈みます)。
東側の線=日の入りと同時に日食が始まります。
西側の線と真ん中の線に囲まれた地域では、日の入りの時には最大食分を過ぎていて、元の太陽に戻る状態で沈みます。その後、地平線の下で元の太陽に戻ります。
真ん中の線と東側の線に囲まれた地域では、日の入りの時には最大食分を迎える前で、その後、地平線の下で最大食分を迎え、元の太陽に戻ります。

今回の「トカラ列島」では、日本国内はこの線にかかっていないので、全国で欠け始めから欠け終わりまで全て観測することが出来ます。

日食図の読み方については、下のリンクから「第1図」と「第3図」を御覧下さい(「第2図」は南半球でのみ見られる現象です)。
「第3図」は、3年後の2012年5月21日と21年後の2030年6月1日に日本で観測される金環日食等で見られます。
日食図の読みとり方
http://www.hucc.hokudai.ac.jp/~x10553/fig2.html
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さて「津軽海峡」で中心食が観測される地帯は、「トカラ列島」で最大食分が「50%(40%~60%の間)」の線とほぼ重なることに気付かれたでしょうか?
反対に南側で最大食分が「50%」の線の付近では、1955年6月20日に中心食が観測されています。

2010年7月2日追記
それを分かりやすくしたファイルをUPしました。
先程と同じく、上が「トカラ列島」、下が「津軽海峡」です。
点線になっている部分が最大食分50%の線です。
2009-07-22.gif

2063-08-24.gif
この様に、SN型ならば、北側の最大食分50%ラインが、3サロス後に中心食が観測される可能性がある範囲、南側の最大食分50%ラインが、3サロス前に中心食が観測された可能性がある範囲です。
逆にNS型ならば、北側の最大食分50%ラインが、3サロス前に中心食が観測された可能性がある範囲、南側の最大食分50%ラインが、3サロス後に中心食が観測される可能性がある範囲です。

もっと分かりやすいサイトもあります。
NASAのHPを開くと、2006年から2012年に観測される日食の一覧が表示されるはずですが、左から4列目に「Saros Series(Link to Saros)」という欄があり、そこに番号が振られています。それが、その日食が属するサロス系統の番号です。
それをクリックしますと、その日食が属するサロス系統のページが開きます。

トカラの皆既日食が属する「136」を例に取ります。
この系統は、1360年6月24日(ユリウス暦による)に南極付近で生まれ、2622年6月30日に北極付近で寿命が尽きるまで全部で71回、地球上で日食が観測されます。「トカラ列島」は、その中の37番目です。
その「37」(2010年修正「一番左にある5桁の数字」)をクリックしますと、上に貼った画像を簡素化したイラストが表示されます。
その中にある緑色の点線が「最大食分50%ライン≒3サロス前(後)に中心食が観測された(される)可能性があった(ある)範囲」です。
これらを誕生から消滅まで連続アニメーション表示したのが「Catalog of Solar Eclipse Saros 136」のすぐ上にある「Saros 136 Animation」です。CPUの処理能力が早いと、あっという間に終わってしまいます。

ただ、これが全てのサロスについて当てはまるとは限りません。

一例を挙げますと、今回の皆既日食が属する「136」のサロス(SN型)です。
このサロスでは、2枚目の図(津軽海峡)から3サロス後にあたる2117年9月26日の朝8時30分過ぎに、樺太中央部から択捉島東部にかけて皆既日食が観測されます。
SN型なので南から北へ範囲が移動するのは普通ですが、それからさらに3サロス後の2171年10月29日の午前9時15分頃には、南へ「逆行」して北海道の渡島半島のほぼ全域と青森県の下北半島(2063年8月24日と重なる地域が多いです)で皆既日食が観測されます。
この時には、中心線付近でも3分ちょっとの皆既日食になっています。
このサロスは面白い動き方をするので、NASAのHPから「136」のページを開き「Saros 136 Animation」を開いて下さい。

勿論、これ以外にも「一生の間」に面白い動き方をするサロス系統もあります。

これに続いて「トカラ列島皆既日食」についてのブログ本編、さらにはもっと凄い「大作(自分ではそう思います)」をUPします。
この時に、このブログがお役に立てると思います。


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北海道大好き人間

>モッズパンツさん
nice!有難うございます。
by 北海道大好き人間 (2009-06-23 12:06) 

北海道大好き人間

>optimistさん
nice!有難うございます。
by 北海道大好き人間 (2009-06-23 23:29) 

北海道大好き人間

>はいてんしょんさん
nice!有難うございます。
by 北海道大好き人間 (2009-06-27 21:15) 

モッズパンツ

明日、日食の記事をうp予定です。お楽しみに。w (^ω^)b
日食グラスはネットも、ビック、ヨドも売り切れになりましたね。w (´∀`)ノ

(^ー^)ノシ
by モッズパンツ (2009-07-17 22:39) 

北海道大好き人間

>モッズパンツさん

記事、楽しみにしています。3連休になるので、何時チェックできるか分かりませんが、早めに記事を読みたいと思います。

私も9・10日に都内へ行ったのですが、その時点でカメラ店は売り切れでした。でも、東急ハンズでは日食メガネを売っていました(今行ってももうないでしょうけれど)。
3年後の金環日食でも使えるのですから、「出し惜しみ」しないでもっと沢山製造すればいいのにと思います。もしかしたら、需要を甘く見すぎたのかも知れません。マスコミが今回の日食のことを報道する様になったのも今月に入ってからですし。

あまりいろいろ書くと、自分の記事で書くことがなくなってしまうので(笑)、あとは当日晴れることを願いたいです(でも、そうなると炎天下での観測になってしまうなあ)。
by 北海道大好き人間 (2009-07-17 23:55) 

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